創立者 羽仁ご夫妻
創立者 羽仁ご夫妻

 【創立者の言葉】

 

おさなごを発見せよ 

その両親や周囲の人びとが、赤ん坊自身にさずかっているみずから生きる力に対して、敬虔な信頼の思いを持っていることから、自然に落ちついた気持ちになって、深い愛情と強い理性と現在最高の知識をもって赤ん坊に接するならば、彼らはたやすくその柔らかい生命にそのよい力をうけるものです。 
 子どもの教育の一番尊い立場はただそこにあると思います。この神秘ともいい得るところの、ゆるぎなき教育の立場をもつことなしに、どんな方法を講じても、それは詰込みにばかりなってしまいます。学校教育ばかりでなく、幼児教育にもどんなに多くこの詰め込み教育が行なわれているでしょう。
  どうすれば子ども達が真面目に育つか、その真面目な人格を基礎として、さらにそのなかに自由自在に目のきく働きのある頭脳ができてゆくか、縦にも横にも強くはたらく実行力が生まれてくるか。それはただ、子ども自身がその生命の中に、自分の生命をまもり育てるために、なくてならない強い賢い力をさずかっているものであることを確信して、赤ん坊の泣き方にも幼児のまわらぬ口にそのおさない思いを語るときにも、それらによって、ほんとうに彼を知ることが第一です。

 あらゆる教育の工夫は皆そこから出てきます。われわれの幼児の教育も養育もこの趣意によって一貫されていることを忘れないようにしましょう。                
           (昭和13年) 著作集“教育三十年”より